カジカガエルは鳴き声が特徴的で美しい為に、少し国内のカエルに興味が出た人なら、誰もが1度ぐらいは気に止める事があるカエルです。
知名度や人気度もそれなりに高く、TV番組などでも取り上げられる事もあるカエルですが、一般的なツリーフロッグらしい容姿に反して、やや、特殊な生態を持つカエルです。
今回はそんな、カジカガエルについて、基本的な飼い方や注意点を解説してみたいと思います。
カジカガエルの特徴
カジカガエルは、ぱっと見、アマガエルやモリアオガエルなどと同系統の、所謂ツリーフロッグらしい形をしたカエルです。
吸盤があるので、壁面も登れるし、木登りも上手いカエルですが、生活の基本は地面になると言う不思議なタイプです。
本来、半水棲のカエルはトノサマガエルの様な体型で、四肢に吸盤はなく木登りなどの立体行動は苦手どころか、
ほぼできないレベルにまで退化しており、代わりに流線形のフォルムと水掻きで泳ぎとジャンプに特化した種となります。
ところが、このカジカガエルは、ツリーフロッグ特有の体型から、泳ぎが下手くそな癖に渓流の岩場に生息していて、驚くと半水棲のカエルと同じく、水の中に飛び込んで逃げるのです…
当然、流れに逆らって泳ぐなんて芸当も苦手なので、縄張りである元の岩に帰る時には、えっちらおっちら、岸沿いや石沿いにゆっくり帰る有様です…
渓流に生息しているカジカガエルの嘘と本当!?
カジカガエルに遭遇するのは、決まって渓流です。
山間の水が綺麗な川にしか生息していません。
これは本当でもありますが、正確な情報とも言えません。
もう少し正確に言えば、この渓流で出会うのは「繁殖期」のカジカガエルです。
それももっぱら、縄張りを主張しつつ、♀を呼んでいる状態の♂です。
この時の鳴き声が大変美しい為に有名なのですが、逆に言えば、繁殖期以外は渓流に居ません。
それ以外の時期は、渓流付近の森で暮らしています。
学者先生ではないので、確実な事はわかりませんが、恐らくこの為に姿形はツリーフロッグなのだと思います。
森での暮らしであれば、地表性の種にはない吸盤が発達しているメリットも大きい事でしょう。
カジカガエルの飼育方法と管理
結局、具体的な飼育設備はツリーフロッグなのか?半水棲種ガエルなのか?が気になるところだと思います。
飼育の際には、繁殖期の渓流と同じ環境を再現する半水棲ガエルを飼う様な飼い方と、地表性のカエルを飼う時の様な飼い方のどちらか2択となります。
ツリーフロッグな見た目ですが、ツリーフロッグの飼い方はあまり適していません。
では、半水棲種的な飼い方と、地表性種的な飼い方のどちらがより適していて正解と言えるのか??
個人的には森暮らしを意識した地表性カエルの飼育方法が楽で、ヒューマンエラーも起きにくい為に長生きする印象が強いです。
繁殖する時も、まずは冬眠が必要となる為に、この飼い方のほうがトラブルを招きにくいです。
ですが、長期飼育をしている人の中には、半水棲種と同じ飼育ケージでも長期間飼っている人もいます。
なので、どちらが良いとも言い切れないのが本当の所です…
飼育者の好みに合わせて、ある程度選択の余地があるカエルと言えるでしょう。
カジカガエルを鳴かせる事を意識した飼い方とは?
カジカガエルを良く鳴かせたいのであれば、半水棲ガエル的な設備に加えて、渓流を意識した環境を作る飼い方がベストです。
トノサマガエルなどの半水棲種を飼う時と同じく、水場を多めにして、石やブロックで陸地を作ります。
そして、必ず、1匹づつ♂を飼育します。
鳴かせない場合でも基本的には単独飼育をお勧めします。
飼育ケージはプラケースの中ぐらいでもなんとかなりますが、必ず「♂だけ」を「1匹だけ」ケースに入れて飼うのが鳴かせるコツです。
メスは鳴かないので、鳴かせる事を目的として飼う場合は、♂のみを選びましょう。
ケースを別々にするのであれば、近くに並べて置いても平気です。
張り合って大合唱になります…
同時に飼う事も可能ではありますが、♂同士であれば常に張り合って鳴くどころの騒ぎではなくなり、さえずりません。
集団が雌雄混合となった場合は阿鼻叫喚の地獄絵図で、冬だろうが、春だろうが、年中無休で見境なく合体を迫り、♂同士で張り合い、瞬く間に♂♀共に体力を消耗する悪循環となります。
これはカエル全般にあり得ることなので、カジカガエルに限らず個別飼育をした方がデメリットは少なくなります。
90センチぐらいの大きな水槽で飼っていても起こりますので、必ず、個体同士が接触できない環境で飼いましょう。
ケースを置く場所は、涼しい窓際や、直射日光の当たらない縁側、冷房が完備された室内(直接風が当たらない事が条件)などに加えて、毎日の霧吹きや、ミストメーカー(霧発生装置)などの器具を使って、涼しく、湿度の高い、本当に渓流を意識した環境を作るのが大事です。
夜中など、かなり大きな声で一晩中鳴いているようなら、設備と環境が合っている証拠です。
反面、極たまに鳴く程度の状況では、イマイチ飼育環境になじんでいない証となります。
6月後半~8月半ば頃までは、本当に毎晩鳴きまくる程に五月蠅いです。
どんなに美しい声でも、睡眠を妨害されるほどに鳴かれると迷惑なので、一通り楽しんだら、地表性の飼い方に変えるのも検討しましょう。
また、たまに鳴く程度の状態であれば、冬眠していない状態であればいつでもどんな飼い方でも鳴きだす可能性はあります…
やや暖かい日などは1月や2月の真冬でも、冬眠ケースから鳴き声が聞こえてきたりします…
鳴かなくてもいいのであれば飼うのは楽!
個人的にお勧めなのが、地表性のカエルを飼う時と同じ飼い方です。
土やミズゴケなどの床材を敷いて、タッパー等で水場を用意して飼育する方法です。
水場の範囲が広い半水棲種的な飼い方と比べて、床材による糞尿の自浄作用があることと、水中に排便されたら水場のみ取り出して清掃できるのが強みです。
清潔さを維持するのがなにより大事なカエルなので、鳴かせる事を意識した飼い方と比べた場合、メンテナンス効率(頻度)と自浄作用、また、餌昆虫が水没して死に辛いなどの多くの点でメリットがあるので、お勧めです。
反面、カエルの体に付いた土やミズゴケなどの床材で壁面が日に日に汚れて行きますので、観察がし辛くなる点や、ぱっと見では、汚らしい印象のケースになってしまうデメリットもあります。
飼育面ではメリットが目立つ飼い方ですが、観察面では定期的な側面の清掃が必要になる飼い方です。
カジカガエルの飼育に必要な物(設備)と注意点
カジカガエルを飼うのに、最低限必要な物は、
・プラケース(中サイズ~大サイズ)
・床材(鳴かせる場合は非推奨)
・シェルター
・水場(タッパーや陶器の灰皿など)
最低限この4つがあれば終生飼育が可能です。
シェルターは無くても大丈夫ですが、捕獲直後の野生個体が落ち着き、人馴れするまでの時間を大幅に短縮してくれる上に、ピンセット給餌も楽になるのでお勧めです。
カジカガエルを手に入た直後の対応
カジカガエルは多くの場合、野生個体を捕まえてくる事になります。
最初の1週間ほどは餌を与えずに、人間の生活音や足音、人影等に敵意が無い事を覚えさせ、落ち着いてから餌を与えましょう。
恐怖におののいている段階では餌を食べないばかりか、その餌にも恐怖を感じてしまい、以後、その餌には反応しなくなってしまいます。
1度そうなるとかなり面倒で、新しく捕まえなおした方が早いほど致命的な調教ミスになりかねません。
1週間すれば恐怖が薄れると同時にお腹もかなり減っているので、バラ撒いた虫を目の前で食べる事も少なくありません。
シェルターの必要性!
特になくても良いものではありますが、カジカガエルが中からこちら(外)を伺う形で陣取るのが常となりますから、ピンセットで摘まんだ餌をシェルター前に持っていくだけで反応してくれる様になります。
コツはシェルターの前から餌を持っていくのではなく、入り口を横切る様な感じで、横から餌だけ見える様に持って行く事です。
ピンセット自体の大きさや人間の腕を隠す形で、目の前に餌だけを出せるので、驚かせずに慣れさせる事が可能です。
繰り返すにつれ人にも慣れて行きますので、シェルターの外にいる時でもいずれは食べる様になります。
そうは言っても個体差がありますので、餌を与える際には、まずは1匹~2匹をケース内に入れて自然に食べるまで様子をみましょう。
撒いた餌を食べるのを確認してから、ピンセットでの給餌に馴らせていきましょう。
シェルターにするのは、ヒョウモン飼育で良く使われるウェットシェルターのSサイズが特にお勧めです。
水場も兼ねているので、中サイズのプラケ飼っていても、ケース内の動き回れる範囲に余裕ができます。
カジカガエルに適した餌の種類や頻度
供給面を考えると、餌昆虫の定番連中が最適となります。
・イエコオロギ
・フタホシコオロギ
・デュビア
・レッドローチ
この辺りが基本餌となります。
口に入る大きさを与える事になりますので、多くの場合はアダルトサイズにまで育った物は利用できません…
♀であればイエコのアダルトぐらいなら無理やり飲み込みますが、大体の場合はS~Mサイズ程度までが利用可能な限界サイズとなります。
これらの虫達から、毎日1匹~2匹与えても良いですし、数日おきに纏めて与えても良いです。
捕まえた時のフォルムが大体の場合はベストフォルムとなりますので、そこを基準にバランス調整し、痩せて来る様なら量を増やし、逆に太ってしまった場合は減らしましょう。
地表をトコトコ歩く虫や、飛び回る虫に良く反応するので、この4種の中ではコオロギが好まれます。
デュビアやレッチは動きが気に入らないのか、慣れない内は拒否する個体も多いので、まずはコオロギを使ってみる事をお勧めします。
また、釣り道具屋で釣りの生き餌コーナーで売っているサシ(蛆虫)を買ってきてハエまで育てて与える事も可能です。
買ってきたサシ(蛆虫)をそのままの袋で放置しておけば勝手にハエになってくれます。
そのまま開封すると飛んで逃げられ大惨事となりますから、ハエになっているのが確認されたら冷蔵庫に入れて3時間~5時間程度冷やし、飛べない状態にしてから開封しましょう。
冷やした直後はピンセットで摘まんでもほぼ動けない状態なので、そのままケースにバラ撒きましょう。温かくなれば普通に動きだします。
ハエはキープが面倒なので、ピンセットからの給餌に慣れてから、たまのおやつ程度で良いでしょう。
ピンセットから食べるのであれば、ハエは冷凍してしまう事も可能です。
また、単一の餌では長期的に見た場合、必ず栄養障害を起こします。
ピンセットからの給餌に慣れた辺りからは、カルシウム剤やビタミン剤など、爬虫類両生類専用のサプリメントを餌昆虫の体に振りかけてから与える様にしましょう。
野外で捕まえた様々な昆虫も、口に入る物であればなんでも利用可能です。
農薬や殺虫剤に汚染されている可能性もありますので、手放しでお勧めできる餌ではありませんが、そうした心配がないのであれば、栄養バランスの面で非常に頼りになる存在です。
カジカガエルの飼育についてはこんな所でしょうか?
汚い環境で飼うと即しんでしまうぐらいにデリケートなカエルですが、清掃面さえきっちり管理できれば、比較的、長期飼育は難しくないカエルです。
完全にさえずらせるのは、ここに書いた飼い方でもなかなか難しくケース自体を置く場所や環境、および個体差もありますが、透き通ったカジカガエルの鳴き声は清涼感があり、何とも言えないノスタルジーと言うか、風鈴的な感覚があります。
是非ともカジカガエルの飼育にチャレンジしてみてください。
この記事が少しでもお役に立てたのなら幸いです。