世界に名だたるレベルで奇妙な虫達の中でも、三大奇虫と言われるビネガロン。
なんでもかんでもTOP3をつけたがる日本人の悪癖が直撃した、3匹の中の1匹がこのビネガロンです。
日本人の悪癖とは言え、一応変な虫TOP3の中の1種なので、当然その奇妙さは折り紙付きです。
そうは言っても、他の三大奇妙な虫達、ヒヨケムシ、ウデムシと比べたら、ビネガロンは比較的マイルドな外見をしていてまだマシな方です(個人的な意見ですがw)
他の二体(特にヒヨケムシw)がなんじゃコイツ!な外見をしているのに対して、ビネガロンはまだその姿に近い容姿の他の生き物が居て、比較できるからです。
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今回はこの三大奇虫の一匹である、ビネガロンを詳しく解説してみたいと思います。
ビネガロンって結局、何者なのか?
ビネガロンなんて名前を聞くと、初めて聞いた人はどこぞの怪獣やB級ホラー映画の怪物を連想しがちですが、コイツは虫です。
種族的にはクモとかサソリとかに近い虫です。
昆虫ではありません。虫です。
昆虫の定義である、頭、胸、腹の3部位に分かれていない変則的な体の作りをしていないクモやらサソリは、大まかな定義としては「虫」に分類されます。
ビネガロンはその中でも、サソリに近い格好をしているものの、サソリとは違う形なので、サソリモドキと呼ばれる連中の総称になります。
サソリモドキなのにビネガロンと呼ばれる所以は、その毒性にありwww
レオパが、トカゲみたいな生活をしているヒョウ柄のあるヤモリなので、ヒョウモントカゲモドキと呼ばれる様に、
ビネガロンもサソリみたいな形や生活形態なものの、明らかにチガウのでサソリモドキと呼ばれるのですが、
んぢゃあ、なんで最初からサソリモドキって言わないのさ!と言われたら、英名がvinegaroonだからです。
サソリモドキなんて和名より、こっちの方がインパクトあって通りが良いので、こちらの方が定着しつつあります。
さらにさかのぼって、じゃあなんで英名がビネガロンなの?との本質的な話になると、こいつ等は身の危険を感じると、
自衛のためにケツから強烈な臭いのする液体を噴射する為です。
いかにも刺してきそうな尻尾の先からではなく、ケツの付け根から出すのがミソですw
この臭いがビネガー(酢)の如き臭いなので、外国の人等はビネガロンと呼んでいるのです…
尻から出る液体は、臭いだけでなく結構な酸性毒なので、皮膚や目に食らうと炎症や角膜炎を起こします。
飼育の際には直撃だけは避けましょう…特に目に入るとかなり危険なので、万が一に備えて、眼鏡やゴーグルをかけて接すれば最終防衛ラインとして機能してくれます。
皮膚に触れてもえらい事になりますから、食らったら即石鹸で洗い流して、痛みが続く様なら病院へ直行しましょう。
成分の80%は酢酸とも言われているぐらい強烈なビームなのですから…油断すると火傷では済まない惨事となります。
臭いだけでなく、キチンとダメージを与えて来る当たり、見た目通りのモンスターとも言えます。
ビネガロンの形態
サソリの様でいてサソリではないビネガロンは、詳しくない人が見たら、基本サソリです。
それもひょろっとした尻尾の頼りないサソリですw 三大奇虫の中ではまだまともな方。
との印象は、この見た目が他の生き物と比較しやすいからです。
一般的にサソリは、毒の無い種ほどデカくて頑丈な体と、図太い尾やハサミを持っていて、
有毒の種ほど小柄で細い尻尾とハサミになりがちですが、ビネガロンは無毒のサソリみたいに図太いハサミと、有毒のサソリよりさらに細くて頼りない尻尾を持っています…
特に尻尾は、別名ウィップスコーピオンとも呼ばれる様に、本当にものすごく細いです…
ボディはサソリなのに、ハサミは太く短く、尻尾は極端に細い…それがビネガロンです。
ビネガロンの生態
基本的には無毒のサソリに準ずるものです。夜行性で肉食。ほかの昆虫やミミズ、ナメクジなどを襲ってモリモリ食べます。
湿った暗い場所を好むので、森林の石の下や倒木の下などに潜み、外敵に見つかったら、威嚇しつつビネガービーム(液体ですがw)を噴射して抵抗。
はい。ケツから出るビーム以外は割と普通の生活を送っている虫です…
見た目が少々奇抜で分類し難い、かつビーム兵器まで持ち合わせているから、奇虫と呼ばれておりますが、
生活形態だけで言えば、そこいら辺にいっぱい居る虫達と大差ありません。
ビネガロンの繁殖形態
特徴的なのはその繁殖形態で、多くのクモガタ類と同じく、真の交尾は行わずに、
雄が雌に精包と呼ばれる精子の詰まった塊を渡す事で子孫を残す点。
メスはお腹に卵を抱えて守り、その間は完全に餌を食べません…
孵化した子供は、最初の脱皮を終えるまでは母親の背中で生活しますが、脱皮を終えたらビネガロンらしい姿となり母親の元を離れます…
そして同時に、母親もその命を終えます…
虫にしては成長の遅い生き物で、3年で3回の脱皮と言う、異様に遅いペースで育ち、アダルトサイズになった後も4年程度は生きると言われておりますが、
ビネガロンも色々な種がおりますので、一概に上記の繁殖形態が全てのビネガロンに該当するとは限りませんが…
ビネガロンの分布
ビネガロンはヨーロッパやオーストラリアを除く、世界各地の熱帯や亜熱帯に分布しています。
伊豆大島の八丈島(人為分布)や九州南部、奄美地方には日本固有種のアマミサソリモドキまでいます。
奇抜な外見ですが、意外と日本にも棲息しているのです…
森林性の生き物なので、進んで探しに行かなければ現地でも早々見かける生き物ではありませんが、
虫が苦手な人からしたら、その見た目はかなりの精神的苦痛を与える物でしょう…
ビネガロンの飼育
基本的には熱帯系のサソリを飼う感覚で飼育可能です。
ダイオウサソリなどの熱帯産サソリを飼う感覚なので、設備も同様の物でOKです。
ビネガロンの飼育で必要な物
基本的には、
- プラケースや爬虫類の専用ケージ(中~大サイズ。最低でも全長の3倍ほどの物)
- 床材(ピートモスやヤシガラ土、腐葉土、ミズゴケ、バーミキュライトなど
- シェルター(倒木や植木鉢の破片など全身が隠れられる物)
- 水入れ
- パネルヒーター等の保温器具(冬場のみ)
こんな所でしょうか?
脱走されるのが一番怖いので、必ず蓋のあるケースで飼いましょう!
簡易設備でよければ、プラケースに腐葉土、浅い水入れだけでもキープ可能ですが、
管理面で特に重要なのは湿度で、このバランスを間違えると、熱帯系のサソリと同じく簡単に死にますw
湿度の管理はプラケースでは厳しくなりがちなので、大き目の水槽や爬虫類専用ケージ飼うのがお勧めです。
三大奇虫の中では飼育し易い方なので、雌雄のペアが揃っていれば、自宅での繁殖も可能です。
基本的な環境設定
ビネガロンの飼育は、湿度の維持がキモとなるので、床材は最低でも5センチは敷きましょう。
シェルターのみならず、この床材を掘って潜る事もしばしばです。
乾燥には特に弱い為、水入れのみならず、朝夕の霧吹きや、床材の湿り具合には十分注意しましょう。
床材は常に、握って団子になる程度には湿らせておきましょう。
シェルターやレイアウトとして、倒木や鉢植えの破片等を設置しておけば、あまりに加湿でベタベタの床材だとこれらの上に避難して動かなくなります。
常に床材に触れない位置に避けて居る時は、床材が湿り過ぎてベチャベチャになっていないか確認しておきましょう。
ビネガロンの基本管理、温度と湿度に注意!
朝夕の霧吹きで湿度を維持する事と、逆に湿り過ぎに注意する事が管理の大前提です。
ほど良い湿り気がビネガロンを状態良く飼うコツなので、霧吹きのし過ぎや、乾燥し過ぎに注意を払う事になります。
特に慣れない内はこの湿度維持が難しく、多湿系の虫飼育に慣れていない人では失敗しがちです。
可能であれば湿度計も使って、70%~80%程度をキープする様にしましょう。
温度は平均して25度程度がベストです。
30以上の高温や20度程度までの低温にも耐えられますが、耐えられるだけであって良くない状態です。
ビネガロンの餌
定番の餌昆虫であれば大体利用可能です。
・フタホシコオロギ
・イエコオロギ
・レッドローチ
・デュビア
この辺りは常に購入可能な餌昆虫です。
国内産の種であれば、野外採取できるダンゴムシも良い餌と言われております。
サプリの使用はなくてもOKです。
多くの場合は虫用のサプリではないので、消化不良等のトラブルに繋がりかねません。
ビネガロンの給餌頻度とサイズ
基本的にはハサミと同じぐらいのサイズの餌を与えます。
一時的にであれば食べるだけ与えても良いですが、
元来はそんなに獲物が取れるような環境で生きている生物ではありません。
食えるときに食うタイプの肉食なので、絶食にはかなり耐えられます。
平均して、3日に1度~7日に1度位のペースで与えておけば良いでしょう。
馴れればピンセットからも食べますが、ばら撒き給餌でもOKです。
ピンセットを使う時には、必ず10センチ以上ある長い物を使いましょう!
(菜箸などでも代用可能です)
短いピンセットや割り箸だと、人間の手を噛まれる危険があります…
ビネガロンの脱皮
ビネガロンも脱皮をします。
蟹の様に脱皮直後は白くなって脆い為に、黒くなるまで餌を与えるのは止めましょう。
この防御力も攻撃力なくなった、無防備な時にコオロギなどを入れてしまうと、反撃されて致命傷となりかねません…。
多頭飼育の是非
ビネガロンも肉食なので、家族や友達といった感覚はありません…
一緒にしたら大体の場合は喧嘩してえらい事になります…
広いケージで飼えばできなくもないようですが、繁殖の予定でもない限りは、単独飼育にした方が無難です。
どうしても同時に飼いたい場合は、個体同士の接触率を下げる為に想定よりかなり大きなケースを使い、
シェルターや倒木など、立体的に移動できる設備や隠れ家を多く入れてやりましょう。
また、単独飼育の時とは異なり、餌切れを起こすのも危険なので、
常に数匹は餌昆虫が生き残っている程度のバランスで給餌するのが良いでしょう。
ビネガロンの値段と寿命
ビネガロンはサソリモドキの総称なので、値段も種類によってピンキリです…
国産であるアマミサソリモドキなら1000円~2000円程度ですが、外国のビネガロンでは5000円以上するのも珍しくありません。
寿命はおおよそ5年~8年あるので、虫としては長い方ですが、例によってほぼ現地採集個体のみが出回る種となります。
なので、購入時に実際の年齢がわかりません…飼育を始めて数か月でお亡くなりになったりする危険が常に付きまといます。
幸い、繁殖自体は容易なので、1ペアいれば自宅での累代繁殖も可能ですが、繁殖=母体の死。でもある為、無計画には増やせません…
繁殖可能になるまで数年を要する生き物なので、愛着が出る頃には繁殖による死…なんて事になれば結構な心理ダメージです。
ビネガロン飼育は、意外と切ない部分もあるのです…
ビネガロン飼育で最も気を付ける事はその毒性!飼育注意点
ビネガロンは身の危険を感じると、その名前の元にもなった、酢のような臭いのする液体を噴射してきます。
この液体は結構な酸性なので、皮膚に食らったら炎症を起こすし、目や口に入るとかなり危険な威力をもっております。
飼育していれば慣れて来て噴射してこなくなりますが、油断するとなにかの拍子にぶしゃあ!!とやって来ます。
ビネガロンの種類によって、良くやる奴と、なかなかやらない種があるようで、さらには同種でも個体差としてやりやすい奴とそうでない奴がいます。
いずれにしても、食らうと不味い液体である事に変わりはありませんので、いつもやらないから今日も大丈夫!なんて油断はせず、
触る時には軍手や皮手袋を使い、無暗に顔を近づけたりはしない様にしましょう!?
念には念を入れて、ゴーグル等を付けて接触する方が無難です。
この液体を出すのは、尻尾の先端と言う人と、付け根からやってくる…なんて両方の話があるので、ケツから先の全体が危険域ですw
種類によって、このビネガービームを出す箇所が、微妙にチガウのかもしれません…
三大奇虫の中では一番普通の外見をしているビネガロンですが、三種の中では唯一の毒持ちで、一番ヤバイのもこのビネガロンです。
メンテの際には大き目の網などを使って、そぉ~と別のケースに移動させることを推奨いたします。
サソリの様に殺す類の「毒」ではなく、刺激性の物質というだけの物なので、厳密にはこの液体は毒ではないのですが、
非常に強い酸性の物質なので、危険な事に変わりはありません…
まとめ
ビネガロンについてはこんな所でしょうか?
飼育されるのであれば、あらためまして…
- 名前の由来にもなっている酸性噴射物に注意する
- 基本的には湿度の高い環境で飼育する
- 多頭飼育するには広いケージが必要
- 餌は単独飼育なら週1回でも良い
- 多頭飼育なら常に数匹は餌が生き残っている環境が良い
- 脱皮して白い時には餌を与えない
この辺りに注意して飼育されることをお勧めします。
ペットとしては熱帯系のサソリと同じ感覚で飼えるので、三大奇虫なんて御大層なカテゴリにエントリーしている割には普通ですw
見た目のインパクトとビネガービーム以外には際立った点もなく、個人的にはもっと変な奴いるんぢゃね??と思うのですが、
学術的な分類で考えると、ビネガロンは十分ヘンテコな生き物となるようです。
一般的な間隔では、なんかちょっと変なサソリw 程度のものなので、ヒヨケムシやウデムシの異様な見た目と比べたら普通です…が、
とは言え、三大奇虫の中では飼育が楽な方と言うだけで、あくまで、「三大奇虫の中」では。です。
虫全体で見たら!!なかなか面倒な種類に変わりはありませんので、飼育を始めるのであれば、よぉ~く吟味してからにしましょう。
寿命も7年~8年程度と、虫としてみたら長い方なので、かなり長い付き合いとなります。
飼育の際にはケツから火を噴くビネガービームに気を付けて飼育してね~。