猪なんて聞くと、都会のひとでは馴染みの薄い生き物ですが、それなりに自然が残っている場所では頻繁に出会う動物でもあります。
狩猟者や田舎暮らしの人間であれば、遭遇しても動じないものですが、見慣れていない人が豚鼻のどでかい毛むくじゃらに出くわすと、かなりのインパクトを受けます。
はっきり言って、出会わない方が良い生き物です。
熊であれば人を襲って食う事がある為に、誰でも恐れますが、猪は豚の親せきみたいな形をしている上に、草食のイメージが強いので、舐められがちです。
ですが、猪は鹿とちがい雑食です。
肉も食べるのです。
人が襲われて行動不能となった場合、最悪、食い殺される可能性のある生き物なのです…
そこで今回は、啓発の意味も込めて、猪の行動パターンや特徴、実害、どんな事故が実際にあるのかを解説してみたいと思います。
猪の生態と特徴 気をつけたい事など
猪は元々、アジアやヨーロッパに生息する野生の豚でしたが、人間によって家畜化された際に世界中に広がり、
そこから再度、野生化して全世界に広がったと言う経緯があります。
分布域によって、かなり大きさに差があり、米国アラバマ州では体長約2.8m、体重約470kgもある巨大なイノシシが仕留められた事もあるようです。
中国東北部のイノシシも体重300kg以上に達するものがいるようです。
日本国内では、北海道を除いた全国に生息しており、たびたび、人間の生活空間に侵入してくる事でTV沙汰や警察沙汰の騒ぎになります。
日本の猪でも大きなものでは200キロを超える個体がそれなりに居る為、大型になればなるほど、その危険も増す事となります。
日本の猪でも100キロを超えることは珍しくありません。
ですが、でかい図体に反してかなりの臆病者で、非常にナイーブなのです。
元来は昼行性の生き物でありながら、人間の生活空間と被る地域では、人との遭遇を避ける為に、態々夜行性になる事が知られています。
臆病者なので、不意に遭遇しても何もしなければ逃走していくものですが、驚かしたり、挑発したりすると、向かってくる事も多々あります。
スマホを向けて撮影なんてすれば、威嚇行為とみなされ、突撃される可能性も十分にあります。
非常に突進力が高く、猪突猛進なんて成句もあるほどに突撃思考の生き物ですが、身体能力と同じぐらい頭も良く、犬以上の嗅覚をも持つため、生物としては、非常に完成している生き物と言えます。
猪は時速45キロ以上で突進する事が可能なので、100キロ以上もの重さがそのスピードでぶつかれば、大抵の人間はすっ転びます。
跳躍力もあり、121センチのバーを70キロもある猪が助走もなしに飛び越える事も確認されております。
また、平均的なオスの大きさと牙の位置が、丁度人間の太腿の位置と同じ高さになるため、ただ転ぶだけでは済まず、大動脈を切られて出血死する事故も起こりやすい、極めて危険な生き物です。
猪はダニや寄生虫を落とす為に、沼田場(ヌタバ)と呼ばれる泥場で、転がりながら泥浴びをすることがあり、
この様子が苦しみあがいている様に見えた事から、のた(ぬた)うちまわると言う言葉が産まれました。
・台風時の猪
猪は鼻が良いので、台風の接近も周囲の湿り気などで事前に感知します。
少しの雨程度なら活動する事もありますが、基本的には荒れている空模様の時には、寝屋と呼ばれる巣でじっとしているのが普通です。
作物などの猪被害が多い年は、台風も多いなんて言われたりもしますが、科学的な検証は行われていないため、
なんとはなしの体感だったり、根拠の乏しい民間伝説となります。
猪の食べ物
猪は雑食ではありますが、その比率は、植物性の餌9 動物性の餌1で、かなり草食に偏った雑食です。
地中の芋などの作物は鼻で嗅ぎ分け、遠くにある作物だって臭いで辿り、のこのこ人家周辺の畑までやって来ます。
残飯を食べようと、ゴミ捨て場を漁る事もあります。
動物性の餌は、ヘビやカニ、ミミズや昆虫など、とりあえず生きている奴はなんでも食べます。
毒蛇のマムシだって平気で食います。それなりにマムシの居た祖父母の田舎では、猟師が居なくなって猪や鹿が無双状態となった結果、老人は畑の管理を諦め、ヘビの出現率は激減し、田舎とは言え非常に生命感のない集落となってしまいました…
(猪だけが原因ではありませんが…)
そんな猛烈な食性を持つ生き物なので、動かなくなった犬や猫、タヌキやキツネ、そして人間も食われます…
猪と出くわした場合の対処法
出会ってしまっても、基本的に放置しましょう。
多くの場合、なにもしなければ向こうもなにもしません。
万が一こっちに近づいて来たら、慌てたり騒いだりせず、ゆっくりとあとずさりしましょう。
大きな声を出したり、急に走り出したりすると、向こうも突発的な行動に出る事があります。
棒や石でもって攻撃するのなんてもっての他です。
農作物を荒らされる農家のおっちゃんなどは、怒りにまかせて「こん畜生が!」とバットや鍬で叩く人が居ますが、猛烈な反撃を受けてしまう可能性もあり、非常に危険なので、止めておきましょう。
猪が毛を逆立てて「シュー!」とか「くちゃくちゃくちゃあ!」とか「かっかっか!」なんて音を出して居る時は特に危険です。
確実に敵視されており、猛烈に威嚇している状態です。
また、小さな子供、通称ウリボウと遭遇したら、特に気を付けましょう。
可愛いからと言って、捕獲や撮影に夢中になっていると、母猪に突撃されます。
一見して周りにでかい猪が見当たらない場合でも、ほぼ確実に近くに潜んで居ます。
可愛くても遠くから眺める程度にしたり、関わらないのが最善となります。
野生の猪との遭遇なんて、普通の人にとっては珍しいものなので、ついついスマホで撮影したくなる気持ちも分かりますが、仮に撮影するのであれば、塀や岩の上、木の上や車の屋根の上などの高い所に登ったり、車内等に籠り、まずは身の安全を確保してから撮影しましょう。
道路上で、わーきゃー言いながら面白がって撮影したら、次の瞬間には転がされ、場合によっては大怪我どころか死ぬ事になります。
実際にあったイノシシに襲われた事故や被害
猪に関する事故は毎年の様に起こっています。
田舎では、作物を荒らされたりするのは最早デフォです。
では実際に起こった事件や、良く起こる実例をいくつか取り上げてみたいと思います。
物損被害
田舎暮らしで普通に猪にも良く遭遇する場所に住んでいた知人の話しですが、ある時、特に何も考えず好みで真っ赤な新車を購入し、普通に出勤しようとした所、猪の親子が車庫前にやってきてしまいました。
猪なんて珍しくもなかったので、エンジンをかけたまま去っていくのを待っていた所、なにを思ったのか母猪、新車に向かって猛烈に突進!親の仇とばかりに突進!突進!また突進!の雨霰w
どうも普段見慣れない色の車と、エンジンの躍動が威嚇に映ったようで、子供を守るべく鬼と化したようです…
哀れ、新車購入数日で車はベコベコ。
ぶつけたワケでもないのに高い修理代を払う羽目になりました…
母猪は特に過剰反応しやすいので、ウリボウに遭遇した時には不用意に近づくのは絶対に止めておきましょう。
猟犬の被害
猪を狩るために調教された猟犬を、猪犬と呼びます。
猪を撃ち殺す為に広い所へと追い出したり、攻撃して足止めしたりするのが主な仕事ですが…
中には猪の反撃に合い、落命する猪犬もおります。
牙での裂傷、殺傷に加えて、突撃でのショック死など、原因は色々ですが、猟犬が倒されると、そのまま食い殺される事もしばしば起こります。
特にはらわたが好まれるのか、猪犬が返り討ちにあうと、腹から食われてしまう地獄絵図となります…
そうした生態は猟師も熟知しているので、犬好きな猟師は犬で猪を追い立てる事はしても、けしかける事はほとんどありません。
(犬なんて道具としか思ってない猟師もいるので、事故は毎年の様に各地で起こっているようですが…)
人身被害
突撃され、太腿を牙で貫かれて失血死する事件は非常に多いです。
特に猟師は山の中で猪と遭遇する為に救出も遅れ、命取りになる事もザラです。
罠にかかった猪をしとめる時にワイヤーが千切れて突撃されたり、トドメを刺そうと槍を構えた際に反撃され、槍が自分に刺さったり等、かなり危険な職業です。
猟師の場合はそうした危険も承知で狩りに行くため、ある意味、覚悟があると言えますが、なんの覚悟もない一般人が襲われる事もしばしばあります。
実際、県内でゴミ捨てに行ったおじいさんが大猪に襲われ、食われて死亡した事件があります。
おじいさんを襲った猪は、地元の猟友会が速やかに仕留めたものの、200キロを超える大物で、胃の中から人間の部位が出て来た為に犯人と特定されました…
日本国内で人間を襲う動物は、なにもクマだけではないのです…
まとめ
イノシシについてはこんな所でしょうか?
家畜化され、芸なども仕込める程に頭の良い生き物ですが、それ故に敵に回った時は恐ろしい存在となります。
近年では森林伐採の影響で、人里に出て来る事も少なくありません。
頭だけの人間と違い、猪は身体能力も優れています。
ハイキングや帰省で田舎に行く時には、十分に注意しましょう。
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