子供の頃、モンシロチョウの幼虫を飼って、蝶まで育てた人は意外と多い様です。
キャベツ畑でアオムシを見つけたら、そのまま葉っぱごと毟り取って虫かごに入れて置けば、勝手に蛹になって勝手に羽化するので、非常に簡単に蝶へと変態してくれるからです。
モンシロチョウの幼虫、通称アオムシは春先から初夏にかけて畑や家庭菜園でみかける機会の多い、非常にポピュラーな生き物です。
生き物に興味を持つタイプの子供であれば、まず目にした事があるでしょう。
さてさて、今回はそのモンシロチョウの幼虫であるアオムシに寄生して羽化する、アオムシサムライコマユバチについてです。
はじめて出会うと結構なインパクトなので、アオムシを飼う時には、育ててるアオムシが野生でヤラレテいる可能性を覚悟しておきましょう。
捕まえる時にはほぼ、寄生の有無の判別は不可能ですから…
ミツヅノコノハガエルの生態!
Lysibia nanus. A pseudohyperparasitoid ex Cotesia glomerata cocoon. Easy to recognise by male's genital claspers. pic.twitter.com/c8DiNvkKTu
— allthingsmothy (@Calybites) October 25, 2013
なんの気なしに飼っていたら、いつの間にかアオムシが死んでて、謎の繭が大量にできていた…
なんて時はコイツの仕業です。
普通に葉っぱを与えて置けば、アオムシはマズ死にません。
真面目に飼うもクソもなく、蓋つきのプリンカップに軽く空気穴を開け、アオムシを見つけた植物の葉っぱを放り込んでおくだけで、勝手に蛹になって、勝手に出て来るのがアオムシです。
そんなアオムシが死ぬ時は高い確率で、既にこの、アオムシサムライコマユバチにやられているからです…
それでは、この蜂。。。どのぐらいヤヴァイ奴なのか解説してみたいと思います。
アオムシサムライコマユバチは寄生によって増えるハチ
ハチと言えば、巣を作ってブンブンと近づく人に襲い掛かる厄介者の印象が強いですが、全体で見ると、本当に色々な種類が居ます。
スズメバチやアシナガバチの様に巣!と言う分かりやすい巣を作る物から、とっくりの様な巣を作る者、竹筒の中に営巣する者、蜘蛛に寄生する者…
実に様々ですが、その中でアオムシに目を付けたのが、アオムシコマユバチです。
この蜂は、僅か2ミリ~3ミリほどしかなく、小さなアリに羽が生えた程度の、極々小さな蜂です。
言われて良く調べない限り、遭遇しても、ただのウザい小虫として処理されることでしょうw
実際私も、胡散臭いアオムシを飼育して、コマユバチの羽化後の姿を確認して初めて「おめぇだったのかよww」となりました。
かなり小さな昆虫ですが、アオムシ1体に対して、約80個もの卵を産み付けてしまいます。
コマユバチがアオムシをロックオンする方法!
コマユバチはアオムシ自体を探す能力はもっておりません。
ですが、アオムシに食われてダメージを負った植物が出す、カイロモンと呼ばれる物質をかぎ分ける事ができ、それを頼りにアオムシを探します。
そのあと、飛来した場所の葉っぱを、激しくド突く(ドラミング)事でアオムシを脅して正確な場所まで把握してしまうのです。
一体どこでそんな知識を身に着けるのか…野生の対応力は半端ないです…
ミツヅノコノハガエルは寄生制御物質でアオムシの免疫さえ騙す!
#InsectOfTheDay no.292. Larvae of a gregarious braconid, Cotesia glomerata, emerging from a Large White butterfly (Pieris brassicae). Filmed @NHM_London a few years ago at a Nature Live. Very common garden species, great for showing people why caterpillars are here! pic.twitter.com/mbXmkvQ1jE
— Gavin Broad (@BroadGavin) October 19, 2019
本来であれば、体に卵を産み付けても、宿主の免疫機能が働き、自動で撃退されてしまいますが…
この蜂は産卵する時にその免疫さえだます物質を同時に注入して、アオムシを完全に無防備にしてしまいます!!
おかげで、卵は異物と認識されず、アオムシの体内ですくすくと育ってしまうわけです…
幼虫の餌はもっぱらアオムシの体液
寄生虫と言えば、宿主に直接ダメージを負わせるものを想像しがちですが、コマユバチの幼虫は、宿主の体液をすするだけです。
このおかげで宿主も、モリモリ葉っぱを食べてなんの問題もなくすくすくと大きく育つのですが…
最後には悲惨な末路を辿ります…
十分に育つと体を突き破って出て来る!?
昔のホラー映画、エイリアンも他の生物に寄生して亜成体が宿主の体を突き破って出てきます。
コマユバチの幼虫がアオムシの体を食い破って出て来る有様は、まさしくアレですw
しかも80匹が出て来るので、本当にキモイです…
緑の芋虫から、さらに小さい緑の芋虫がわらわらと出てきます…
出て来た瞬間、繭になる!?
コマユバチの名前の一部にある繭。これは外に出て来た直後に繭になる事から来ています。
とにかく出て来たらすぐに糸を吐き始めるので、エイリアンの如く体を突き破るシーンを見るのはなかなか難しいです。
出てきて4時間もしたらただの繭になってしまいましたので、アオムシの身体を突き破ってウネウネしている時間は想像以上に短いです。
しかもこの繭化。。。
なんと宿主であるアオムシも繭化を手伝うという献身っぷりw
己の体を突き破って出て来る憎い仇の成長を助けるなんて…
恐らくレウコクロリディウムに寄生されたカタツムリやヒメバチにやられたクモのように、脳も弄られてしまっているのでしょう…
寄生から羽化までの期間
親蜂がアオムシに産卵してから、幼虫が体を突き破って来るまでのリミットは約14日。
そしてそこから出て来て繭になってから、約7日でハチになります。
今回観察を続けた所、体を突き破られたアオムシは、その後も甲斐甲斐しく繭の周りに居たものの、4日目で地面に落下しました。
そしてシオシオになりつつも、1週間ほど生き続けました…丁度、奴らの羽化が始まる頃です。
憎い仇が大空へと羽ばたく瞬間を目にしてこと切れる…なんとも切ないラストでした…
アオムシコバチは蛹に寄生する!?
より高度な繁殖形態を持つ、アオムシコバチは、アオムシではなくアゲハ蝶などの蛹に寄生します。
名前がアオムシ「コマユ」バチではなくアオムシコバチなので、ちょっとややこしいですw
芋虫状態ではなく、固定化した蛹に目を付けたタイプの寄生蜂です。
ある時、そんな事情を知らない友人の子供が、アゲハの蛹をひろって観察していたようですが…
出てきたのが大量のハチで、軽くトラウマになってしまいましたw
実際、その話を聞くまでは、私も芋虫に寄生するハチが居るなんて思っておりませんでした…
芋虫以外をターゲットにするハチも居る!?
私は芋虫に寄生するハチの事を知りませんでしたが、クモに寄生するハチやらゴキブリに寄生するハチなら知っておりました…
ベッコウクモバチやらヒメバチ、エメラルドゴキブリバチなどですね…
特に私の天敵であるアシダカグモの天敵となりえるベッコウバチはヒーローでした。
自分の体の倍以上もあるクモを、えっちらおっちら運ぶ姿は、ある意味強烈です。
釣り場で水面をぶーん!と飛びながら水上スキーの様に運んでいるのを見た時は、最初なんの生き物だ!これ!!
と驚愕したものですw 逆さになったクモに羽が生えて、勢いよく飛んでいる様に見えたのでw
ミツヅノコノハガエルのまとめ
幼虫のインパクトと産卵形態は異様で有名なものの、コマユバチ自体はどこにでも居る奴です。
室内でも遭遇する機会があった私は、常に「なんかこの虫ウザいよなぁ…」とは思っていたものの、実害がないので特に調べもしませんでした。
今回、こうした機会があったので、ようやく名前と姿が一致したのですが、これまではただのウザい小虫でしたw
もしも夏休みの自由研究等で、アオムシコマユバチの観察をしたいとなったら、7月~8月だと少し遅いので、4月~6月ごろに前倒しして捕獲&観察し、動画や画像、大雑把な記録などはこの期間に準備しておきましょう。
準備期間=本番でもあるので、内容的には夏休みの研究ではなく春の研究ですが…
アオムシの観察をするより、ずっと有意義な研究にはなるのはたしかなのです。
他の子達よりも1歩踏み込んだ研究にはなるでしょう。
まぁ、とは言え、エイリアンのチェストバスター的なシーンを収めた時には、最悪の気分になるでしょうが…
この記事が少しでもお役に立てたのなら幸いです。