クレスは、品種改良の歴史が浅い種類のトカゲ(ヤモリ)ですが、その飼いやすさと、元来の希少性が合わさった結果、それなりにマニア受けして、今ではそこそこの品種が作られています。
今はまだ、レオパやコーンほど大量にバリエーションがある訳ではありませんが、この品種量は、選んで飼える程には豊富です。
ほかの爬虫類ではそこまで細分化されない所でも、マニアの琴線に触れた事でガッツリ細分化され、模様の定義と組み合わせで様々に呼び分けられています。
専門的で細かく呼び分けるほど、『クリームアンドブラウンハーレクインピンストライプ』の様に、有名カフェでの注文の如く、ワケが分からなくなるので(笑)、今回は、分かりやすい代表的な基本品種について解説してみようと思います。
クレスは遺伝パターンが複雑
クレスの品種は、多因子遺伝(ポリジェネティック)です。
劣性、優性、共優性、不完全顕性(優性)、超顕性(優性)等の、ブリーダーが操作しやすい遺伝パターンに当てはまらない事が多いです。
ですが、ダルメシアンやハーレクイン、ピンストライプのようにある程度遺伝パターンが存在する、とされているものもあります。
とは言えある程度なので、結局の所、劣勢なのか優性なのか、は、やっぱり完全には解っていませんw
クレスのモルフ(品種)の基本
クレステッドゲッコーのモルフは基本的に
・パターンカラー
・モルフ
・系統
となります。
クリーム色がベースで、茶色の模様のあるハーレクイン。更に1本ストライプが入っている個体は、冒頭で述べた、クリームアンドブラウンハーレクインピンストライプとなります。
きっちりした品種名では、こうした、じゅげむじゅげむの様な長い名前で語られてしまう為、今回は代表的な「基本品種名」にのみ絞って解説いたします。
ノーマル
後述する様々な、色彩や模様に該当しない物をノーマルと呼びます。
今では品種として呼び分けられている様々なモルフでも、元々はこのノーマル扱いでした。
ここから特徴的な物を選りすぐり、それらを選別配合して現在のモルフへと繋がっております。
アルビノなどの先天的な色素異常を起こした物以外は、精々、ノーマルの中で特徴的な個性を持つ奴ぐらいの物でしたが、マニアがこぞってそうした個性的な個体を呼び分け、定着させる事で品種が確立されていくのは、クレスも他の爬虫類と変わりません。
背中の模様が~とか、腕の模様が~ 等の曖昧な部分を特徴として品種名が付いた物は、そう言い切る事もできないし、ノーマルと呼ぶのもなんかチガウ…なんて微妙な輩も多く、大別すればノーマル扱いになる事もあります。
今後は、新たな品種として定着するかもしれない模様や色彩でも、現在、呼ばれ方が定着していない物はノーマルとなります。
(そうしたものは呼び方が定着していないだけで、ショップ固有レベルではヘンテコな呼び方をされてたりはしますw)
パターンレス(ソリッド)
全く模様の無い個体をパターンレスと呼びます。
地色が、オレンジ色だろうと、クリーム色だろうと、ホワイトだろうと、模様がない個体であればパターンレスです。
※オレンジパターンレス等と呼び分けられる土台となります。模様ではなく、色としてカテゴリされるものでもあります。
昔はソリッドと記載される事もありましたが、今ではパターンレスで統一されているようです。
ダルメシアン ※模様系
犬のダルメシアンの様に、全身に黒子の様な模様が入る個体をダルメシアンと呼びます。
程度はピンキリで、そこそこダルメシアンっぽい物から、なんか少しだけ黒子の多いノーマル…みたいな奴まで様々です。
少なくとも、ぱっと見で犬のダルメシアンだ!と呼べるものではありません…
スーパーダルメシアン
圧倒的に黒子が増えて、誰が見ても「これもう犬のダルメシアンじゃん!」となる個体は、スーパーダルメシアンと呼ばれます。
一応、スーパーダルメシアンは、100個以上のスポットが入る個体…と言う定義がありますが、キッチリ数えて販売される事は少なく、何とはなしに、すげーホクロ多いなぁ…ぐらいの感覚で決められる、曖昧な表現となります。
(とは言え、見た目的にそう呼び分けられない印象の物は、まずスーパーダルメシアンとは呼ばれませんw)
ファイア(フレイム)
炎の名の通り、模様が炎っぽくなる個体をファイアと呼びます。
模様が炎っぽいだけで、別に赤いワケではないのが罠ですw
体の側面の柄が炎っぽい個体がそう呼ばれ、全体的に炎の模様がある訳でもありません。
ヤング個体の時にはファイアでも、アダルトになったら消えてしまった…なんて悲劇もあります。
ハーレクイン
ファイアをさらに改良して、手や足にも炎っぽい模様が出る様になったのが、ハーレクインです。
横っ腹や腕、足と、細かく炎柄となる為、言われなければ、ただの模様にしか見えないのがミソw
少なくとも、クレスにあまり興味がない人にとっては、ファイア共々、ノーマルとの違いを感じ辛い品種です…
ドリッピー
滴るの名の通り、背中から腹にかけて雫の様に模様が入るタイプです。
ハーレクインの腹から背に向かって燃え上がる様な模様の逆パターンです。
やはり、詳しくない人からしたら「うんん??」となるような、曖昧な品種ですw
ピンストライプ
背中の棘(正確には外側)に沿って、明るい模様が入る個体がピンストライプです。
ピンストライプは、あくまで細い縦縞を指す品種名なので、カリキンの様に1本とは限らないのが罠。
背中の外側に沿って現れる模様なので、後述するタイガーやブリンドルともコンボする、ややこしい品種です。
他の爬虫類のピンストライプと感覚が少し違うので、注意しましょう。
タイガー
ストライプとは逆に、横縞が入る物をタイガーと呼び分けます。
こちらも非常に曖昧な個体が多く、言われれば確かに横縞なんだけど、コレ、もうただの模様でいいんじゃねぇの??
となる個体も多いです。
マニアはとにかく、少しでも変わった印象の個体を呼び分けたがる生き物なので、一般の人からはなんのことやらさっぱりな事もしばしばあります…
ブリンドル
背中に濃い斑模様が入る物が、ブリンドルです。
タイガーでもノーマルでもない、曖昧なタイプです。
カリキンで言えばアベラントでしょうか?
※色系
色系はそれぞれおかしな名前もついておらず、そのまま色で記載されます。
・オレンジ
・ホワイト
・オリーブ
・チョコレート
・イエロー
・レッド
・ニア・ブラック
・ベージュ(バックスキン)
こうしたものの中から2色以上を持つ個体は、バイカラーと呼ばれます。
さらに模様が加わり、様々なコンボを経て新しい品種名に繋がります。
※例・オレンジ色と暗いベースカラーで、模様がハーレクインならハロウィン等
クレスは気分や環境で色彩を変える生き物なので、これらの色合いは飼育下で明るくなったり、暗くなったりします。
マニアは、明るくなる状態をファイアアップ、暗くなる状態をファイアダウンと呼び分けますが、一般的にも専門的にも、明るい暗いで十分通用します…
クレステッドゲッコー それぞれの値段
ここまで細分化して呼び分けられると、もうノーマルなんて居ないんぢゃないの???
となりますが、どうもそれは値段にも表れる様で、明確に呼び分けられるほどに分かりやすい、スーパー個体以外は、モルフ名が付いていてもノーマルと値段的な差がほぼありません…
平均的な価格は、どのモルフも、大体15,000円~30,000円程度となります。
クレスも、ビビッドで明るい色彩やコンストラストのはっきりした物など、誰が見ても分かりやすい個体ほど珍重されがちです。
平均価格より高い物は、それ相応に特徴がはっきりしている個体と思って良いでしょう。
クレステッドゲッコーのモルフ まとめ
クレスの品種についてはこんな所でしょうか?
クレスはまだまだ発展途上であり、他の爬虫類の様な先天的な異常を固定したものは、まだまだ定着していません。
クレスの品種の定義となっている模様や色彩は、全てノーマルから選別配合を繰り返した、ある意味「ノーマル」な個体達です。
人の手により個性を操作された…と言う意味では不自然ですが、アルビノの様な身体障碍とも言えるレベルの異常を、より不自然に固定した物ではありません。
(品種改良の定番であるアルビノは、ブリーダーレベルでは作出されているかもしれませんが、一般に流通するほどには確立されておりません…)
先天的な異常個体は、最初の1匹が何万匹の中から運良く出る事を祈るしかない、完全な運ゲーとなりますが、1匹出れば、そこから近親配合を繰り返し、枝分かれして瞬く間に増えて行くのがこの業界のデフォです。
人気のあるクレスであれば、アルビノの到来も遠くはない…と思うのですが、ペットフロッグの定番でもあるベルツノガエルは、未だにアルビノが作られておりません…
(アルビノどころか、それ以外の色素異常も定着しておりません…)
遺伝形質がはっきりしていない、クレスの場合はさらに難関となりそうですが、いつの日か、クレスのアルビノも一般的に入手できる日が来ることを祈りましょう!
この記事が少しでもお役に立てたのなら幸いです。
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