ハンミョウ。この美しい昆虫は生息地域も限られ、かつ国内産の虫故に需要も少なく、販売されている事も稀なので、生活圏内が生息圏内でない場合、出会えない事も多いレア昆虫です。
また、トータルで見れば飼育は簡単な部類なのですが、要所要所で面倒な所もあり、美しさに反して、万人に飼育をお勧めできる昆虫とは言えません。
が、豪快な捕食シーンやキモカワ幼虫時代など、飼育を楽しめる要素も大きい昆虫でもあります。
今回はそんな、ハンミョウの基本設備と日常管理の注意点について解説してみたいと思います。
(毒のあるツチハンミョウ属はお勧めできるハンミョウではありませんので、今回の紹介はナミハンミョウを想定した物となります)
ハンミョウの飼育に必要な物!
ハンミョウは日本の生き物なので、大層な飼育設備は必要ありません。
- 飼育ケース(水槽やプラケース)
- 土
- 水飲み
- シェルター(植木鉢の破片等でもOK)
これだけです。
飼育ケース以外は、捕獲した所などの生息地周辺から持ってくれば良いでしょう。
飼育ケース
ケースは中サイズのプラケースや、40センチ程度の水槽で十分です。
大きすぎて悪いと言う事はありませんが、生きた餌を投入するのが給餌の基本になりますので、捕獲しやすい様に適度なサイズを使って、逃げる場所を少なくした方がハンミョウにとって有利になります。
また、肉食の虫なので、1つのケースに1匹が基本です。
大き目の水槽であれば、数匹程度なら同室で飼えなくもないですが、共食いの危険は常にありますので同室で飼わない方が無難です。
土
基本的に飼うだけならどんな土でも良いです。
生息地を再現してより良い環境で飼うのなら、湿った土壌の日当たりが良い環境を好むので、必然的に粘土質な土 or 湿った砂となります。
捕まえた場所の土をそのまま採集してきて、湿り気具合も再現するのが理想です。
あくまで理想なので、繁殖を意識しないのなら、どんな土でも構いません。
適度に湿らして、拳でぐいぐい押し込み整地して、全体を平に固めると良いでしょう。
深さはおおよそ10センチほどあれば良いとされていますが、繁殖を意識しないのであれば、もう少し浅くても問題ありません。
また、川の砂場にも良く居るので、砂でも大丈夫だと思いますが、私の所では土のみ使用しておりました為、そちらの適正については不明です。
水飲み
水飲みは浅い入れ物であればなんでもOKです。
極端な話、ペットボトルの蓋でも問題ありませんが、水が傷みやすく、存在自体にも気づかれにくいと言うデメリットもあるので、できれば小さめのタッパーなどを利用した方が良いです。
ただし、タッパーや専用の水飲みを使うと、落水の危険が付いて回ります。
ハンミョウに限らず、多くの昆虫は全身に細かい毛が生えている事があり、長時間落水するとこの毛が水を吸って機敏に動けなくなります。
この毛は、最初の内は水を弾いてくれる側面もあるので、水面に浮くのに一役かっているプラス要素なのですが、
ハンミョウは割と毛深い方なので、この影響も強く、水に浸かり過ぎると大量に吸ってしまい、下手するとそのまま水死します。
このための保険として、水飲みには脱出ルート用に少量のミズゴケを入れるのが一般的となっています。
脱出ルートはミズゴケでなくとも良いので、スポンジの破片や布切れ、水面から帰れる様な高い石など、水飲みにはなにかしら土壌に帰れる物を入れておきましょう。
シェルター
シェルターは言わばハンミョウの隠れ家です。
日陰になってて、全身が隠れられればなんでも良いので、植木鉢の破片やちょっと太めの枝などを利用しましょう。
爬虫類や昆虫専用の物を使っても良いですし、プラモデルやフィギュアなどを使ってジオラマ的にしても特に問題はありません。
(細かい傷はつきますし、アゴでガリガリやられる可能性もゼロではありませんので、やられても良い物を使いましょう)
飼育ケースセット時のコツとNG行為
ハンミョウは基本的に見通しの良い所で狩りをします。
隠れて襲うのではなく、高速ダッシュで突撃するタイプのハンターです。
この為、障害物が多いと上手く狩りができない自体になりかねません。
飼育下と言う特殊な状況では、獲物が壁にぶつかって逃げられないので、狩りのスイッチが入った相手を逃がす事は少ないですが、それでも障害物が多いと、相手を認識できない事も多く、狩りのスイッチが入らない事も多いです。
必ず、フラットな面積を多く作りましょう。
水飲みやシェルターが大きくなりすぎるとこうした「狩場」を作れないので、その場合はケースサイズを見直して大きい物にするか、シェルターや水飲みを小さくすることで対応しましょう。
また、生きた草を植えるのは基本的にNGです。
生息地では生えている所に居る事も多いですが、飼育下では邪魔になる事の方が多いです。
どうしてもビバリウム的な飼育ケースにしたい場合は、想定よりかなり大き目の水槽を使って、できるだけ狩場スペースを殺さない様にしましょう。
草自体は、空中湿度の維持や汚物の浄化などにも役立ちますので、スペースさえ用意できるのなら植えても悪い物ではありません。
ハンミョウの日常管理
日常の管理は餌やり、水やり、霧吹きとなります。
水は数日に1回は交換し、霧吹きは土が乾燥しない程度に朝と夕方実行します。
土がびちゃびちゃに濡れてしまうのはNGなので気を付けましょう。
十分に湿っているのなら霧吹きはスルーしても良いのですが、霧吹きの際に壁際の水滴を必死に舐めるのであれば
水飲み場に気が付いていない可能性が高いです。
水飲み場を大きくしようが場所を変えようが気が付かないこともありますので、霧吹きで与える事となります。
この場合は飲み水を兼任しているので、土の湿り気維持とは別に霧吹きが必要になります。
また、掃除の際には軍手などを使って噛まれない様にしましょう。顎の力が強いので、サイズの割りには結構な攻撃力を持っています。
排泄をしても土壌のバクテリアが十分分解してくれる程度の量なので、土を全部取り換える掃除は2か月ぐらいしなくても大丈夫です。
ハンミョウの餌
ハンミョウに使えるお勧め餌は以下の物となります。
- SS~Mサイズぐらいのコオロギ
- 小鳥用のミールワーム(爬虫類用のジャンボミールワームはNG)
- デュビア(SS~Sサイズ)
- レッドローチ(SS~Lサイズ程度)
ミミズや蛾、ハエトリグモやなどのハシリグモ小型クモも食べます。
基本的に自身よりやや大きい程度の虫までならなんでも食べますが、定期的に入手できると言う意味では、上記の4種がお勧めです。
ただ、ミールワームは放って置くと、せっかく固めた土をほじくり返して潜って逃げます。
餌にもならずセッティングも破壊する悪党になり果てますので、4種の中ではイマイチお勧めできない餌となります。
ハンミョウの給餌間隔とコツ
肉食なのでかなり長い間絶食に耐えられますが、食い溜めをするタイプのかと言えば、爬虫類や両生類と比べるとややマイルドです。
腹がいっぱいになると無理してまで食べようとする事は、少ない印象です。
2~3日に1回、1匹~2匹、SS~Mサイズのコオロギを入れれば十分ですが、キチンと食べるかどうかは観察しましょう。
餌を投入したら、毎回猛ダッシュで突撃してきて餌を咥えているのにさらに他の獲物を捕らえようとするなら、餌が足りていない証拠ですので、頻度や量が足りないか、または与えた餌がケースで逃走し続けて、腹に収まっていない可能性があります。
少々残酷ですが、後者の場合は餌の足を毟ったり、半殺しにしてハンミョウの視界内に落としましょう(目の前はNGなので、数センチ先で)また、飼育開始後1週間しても食べないのであれば、餌自体におびえている可能性もあります。
その場合は餌のサイズを小さくしたり、別の餌を与えて見ましょう。
人馴れすると、ピンセットからも食べる様になるので、冷凍したコオロギなども利用可能ですが、基本的には生きた物しか食べないと思った方が良いでしょう。
また、ハンミョウは昼行性の生き物です。
狩りは基本的に明るい内にする珍しいタイプなので、餌は朝~昼にかけて与えましょう。
まとめ
ハンミョウは美しい体と捕食シーンで色々と魅せてくれる昆虫ですが、成虫の寿命は7か月~1年程度とかなり短いです。
これは昆虫全般に言える事ですが、幼虫時代と合わせればそれなりの年月を生きる彼らも、成虫時代のみに限って言えば短い物も多いのです。
また、見つけようと思っても生息地が特定できない限り出会えない虫でもあります。
せっかく飼育設備を購入しても、短い付き合いになる昆虫ですので、飼育の感覚的には夏休みの自由研究でカブトムシを飼うのに近いですが、
ハンミョウを自由研究で取り上げる子供はまず居ないでしょうから、自由研究の題材にすれば話題性だけなら抜群ですw
もしも運よくハンミョウに出会えたのなら、是非とも飼育に挑戦してみてはいかがでしょうか!^^!
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