ヘビの餌と言えば、ネズミにカエル、そして卵を連想する人は多いでしょう。
ですが、実の所、ヘビ全体でみると卵を食べるヘビは少なく、
国内に至っても一部のヘビが食べなくもないだけで、好んで食すことは稀です。
鳥の巣は襲いやすいから襲うものの、巣を襲う場合、雛や親鳥の方が何倍も好まれます。
とは言え、鳥の巣を襲撃した時には、
好む好まず、親も含めて全部食べたいってのが本音でしょうが…
家でも鳥小屋があった頃には蛇に襲撃された事が多々ありますが、
アイツら根こそぎ持っていきますからね…。
食性が変わった蛇や偏食のヘビは、マニアから変態ヘビと呼ばれる事がありますが、
アンフューマー(ウナギみたいな両生類)やサソリしか食べないと言った、
究極の変態達と比べたら、タマゴヘビはまだマシですw
今回はその卵のみしか食べない、アフリカタマゴヘビについての解説です。
アフリカタマゴヘビの分布
アフリカタマゴヘビは、
サハラ砂漠を除いたアフリカ大陸とアラビア半島南部に生息するヘビです。
アフリカに生息していて卵しか食べないから、アフリカタマゴヘビ…
なんとも安直な名前ですが、
和名は安直な物ほど通りが良いので、分かりやすいと言う意味では100点ですw
単にタマゴヘビとも呼ばれます。
アフリカタマゴヘビの飼育方法
サイズは50センチ~1メートル程度のやや小型ヘビですが、
非常に個体差や地域差が激しく、茶褐色や灰褐色、緑褐色などの色彩差に加え、
模様の多い少ないも加わり、個々を見比べても、
見慣れていなければ同じヘビとは思えないのが普通です。
それらをあえて一言で纏めるなら、地味な蛇です。
食性の異様さに反して、見た目は派手さのかけらもない蛇となります。
タマゴしか食べないので、歯も無く、噛まれた所でノーダメージです。
飼育下での観察では、驚いた所で、
そもそもあまり噛む素振りを見せません…(少なくとも私が確認した中では稀でした)
アフリカタマゴヘビの生態
サバンナや低木林を主な住処としていて、鳥類の卵しか食べないのが最大の特徴です。
まぁ、最大の特徴と言うか、それ以外の特徴は…無いのですが…
その習性から、鳥類の繁殖期以外はなにも食べずに過ごします。
ヘビ全体を通してもかなり絶食に耐える事が可能なヘビですが、
耐えると言う表現は少々正確ではなく、彼らにとっては普通の事なので、
飼育下では、変なタイミングで頻繁に餌を出された方が致命的です。
あくまで物がないから食べないのであって、あれば食べてしまいます。
アフリカタマゴヘビを飼うのなら、まずはこの習性を覚えておきましょう。
アフリカタマゴヘビの飼育機材
アフリカタマゴヘビも、普通のナミヘビ科飼育の基本セットで飼育可能です。
- プラケースや爬虫類専用ケージ
- 土やウッドシェイブ等の床材
- 水入れ
- 保温用のフィルムヒーター
こんな所でしょうか?これだけで、ほとんどのナミヘビ科のヘビを飼育可能です。
アフリカタマゴヘビ飼育の心構え
飼育設備自体は他のナミヘビ科のヘビと同じですが、
卵しか食べないと言う性質上、餌の種類と頻度が最大の焦点になります。
広いアフリカ大陸に棲むヘビなので、
それなりに鳥類の繁殖時期にもバラつきがありますから、
日本の鳥の様に春先~初夏にしか繁殖期がない!なんて事はないのでしょうが、
それでも半年以上は食べないのが基本です。
その代わり、あればあるだけ、とにかくお腹いっぱいまで飲み込みます。
今食わずにいつ食べる!との勢いで食い貯めするのがデフォです。
この習性を飼育下でも再現する事になります。
餌の基本はウズラの卵
十姉妹を大量に飼っていて、
毎日の様にボコボコ卵を産んで困っている…なんてお宅でもない限り、
タマゴヘビの餌はウズラの卵を使う事になります。
冷蔵庫から取り出してすぐに与えるのはNGなので、
常温でしばらく放置しておき、卵の温度と外気温を同じか、
やや暖かい程度にしてから投入します。
ここで大事なのは、ちまちま1つづつ与えない事!
パックに入ってる卵全部を投入してしまいましょう。
あたかもウズラの巣があるかの如く、どっさりと一か所にw
タマゴヘビは数日に渡って餌を食べると言う事はあまりなく、一気にがっつり食べます。
2~3日しても残ってる卵は全部破棄しましょう。
お腹がいっぱいになるとしばらく餌を探す事すらしません。
ヘビのサイズにより飲む数は変わるので、
一概には言えませんが大型個体ではウズラの卵で5個以上飲むのが普通です。
餌食いの良い個体では卵の投入と同時に、
舌をチロチロ出して臭いを確認する様子が見て取れますので、
そのまま卵を飲み込む様子を観察できれば、
胸の辺りで絞り「グシャ!」と潰す音も聞こえます。
しばらくすると身をよじって「おえ~」っと卵の殻のみ吐き出しますが、
通常行動なので心配はいりません。
アオダイショウなどの国産ヘビでも卵を飲んだ後には殻を吐き出します。
食事が終わってしばらくしたら、この殻は丁寧に取り除き、掃除しておきましょう。
放置すると生臭くて大変な事になります。
アフリカタマゴヘビの日常管理
ウズラの卵1パックを使ったら、おおよそ3か月程度は放置です。
餌を与えても食べないし、
仮に食べても生理サイクル的にマイナスに繋がるだけなので、水替えだけしましょう。
餌を食べないので糞も少ないし、脱皮の頻度も少ないです。
日常のお世話と言えば、基本は新鮮な水を維持するだけとなります。
その性質上、タマゴヘビは最も手抜きが許されるペットスネークと言えます。
アフリカタマゴヘビのお値段と選択時の注意点
タマゴヘビは大体15000円~30000円程度で販売されています。
専門店でも見かける機会は少ないので、時期や入荷量、
サイズによっては値段にかなりばらつきがあります。
また、小さければ小さいほど安くなりますが、
最低でもウズラの卵を飲めるサイズの個体を買う必要があります。
最低値は15000円前後ですが、それらは全て
ウズラの卵すら飲めない厄介者であるために安いと言っても過言ではありません。
もちろん、高くて小さい物は論外ですが、
タマゴヘビを飼うのなら、体のサイズがとにかく大きい個体を選びましょう!
タマゴヘビは養殖されている事の方が稀なので、
基本的に流通している個体は全てWC(ワイルドコート)と呼ばれる野生採取個体です。
小さくても大きくても総じて神経質で、そう言った意味では難易度の高いヘビとなります。
大きいヘビの方が、そうした面でも有利に働く側面がありますし、
小さいヘビではなにも食べずに死んだ…
なんてのが普通の種ですので、購入する前にはよ~く吟味するのが大事です。
時期物ですので、どこかで見かけたら他のショップにも入荷している可能性は高いです。
可能であれば複数の店舗を周って、
自分好みの色彩と合わせてサイズや値段を吟味しましょう!
また流通するのが野生個体と言う事から、
ウズラの卵を食べられるサイズでも頑なに拒否して食べず、
そのまま死んでいくだけ…なんて例も良くあるヘビです。
洗浄済と書かれている卵でも普通に食べるものの、
鳥の臭いが残ってないので見向きもしない!なんて奴もザラですから、
可能であれば、既にタマゴをショップで飲んだ経験がある個体を選択しましょう。
アフリカタマゴヘビの長所と短所
タマゴヘビはヘビ飼育の中でも、特に手抜きが許されるヘビです。
餌の頻度が極端に少ないので、糞をしないから掃除の手間もない。脱皮頻度も少ない。
1度の餌代も少ないし、見た目も渋くて日本人好み…等々、一見すると長所が際立ちますが、
それらは逆に言うと、
- 餌を与える楽しみに乏しく、管理する楽しみもほとんどない。
- 成長も遅く、いつまで経っても小さいまま。
- 見た目も地味すぎて目を楽しませる事もない…
と、
長所がそっくりそのまま短所にもなりますw
ぶっちゃけ、飼ってて楽しいのか?と聞かれたら、めっちゃつまらないヘビです…
卵を飲み込む動作は、確かに最初こそヘビ飼育になれた人でも「おぉ~」となるものですが、
それだって毎回やっていれば作業になります。
数か月に1度の楽しみと言い換える事も可能ですが、それでもつまらない期間が圧倒的です。
最終的には飼っていると言うよりは、
なんかヘビの入ってるケージが置いてあるだけ…みたいな感じになります。
(あくまで私の感想ですが…)
まとめ
アフリカタマゴヘビについてはこんな所でしょうか?
正直、飼っていても面白くない上に導入の段階で結構な難易度となる蛇なので、
あまりお勧めはできないのですが、
噛まれても痛くない&大きくなるペースが遅い事から、
そう言った意味では初心者のハンドリングに向いている蛇とも言えます。
ただ基本は神経質なヘビなので、ハンドリングはNG行為で、
突然餌を食べなくなってしまう可能性もあります。
初心者向けの側面があるものの、
初めてヘビを飼う場合には全くお勧めできないと言う困った奴ですが、
ネズミやカエルを餌に使いたくない場合や、ちょっとヘビ飼育に慣れたので、
少しは変わった奴を飼ってみたい…なんて場合には選択肢にあがる蛇となります。
入荷自体もランダムなので、手に入れる時点でも流通量が少ないと言う壁がありますが、
もしも興味が湧いたのなら、ショップでよ~く吟味してみましょう。
この記事が少しでもお役に立てたのなら幸いです。
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