日本人にとって、カエルは身近な存在です。
田畑の害虫駆除に一役買う彼等は、古くから親しまれて来ました。
そんな彼等の種類数は、日本という島国で絞ってみると、現在43種類。
世界規模で見ると4000種以上いるとされているので、ちょっと少ないです。
そして、本州に絞った場合、さらにその約半分以下の17種となります。
日本に住んでいる43種の内、約半分以上が南西諸島に生息する固有種だからです。
ヘビや昆虫なども南西諸島固有の種が多く、カエルに限らず、本州で出会える生き物は実の所そう多くありません。
今回はその、そう多くはないけれど日常で出会える可能性のある、本州のカエル。
それもツリーフロッグと呼ばれるタイプについて紹介したいと思います。
フロッグとトードって?
まずは簡単な呼びわけの基本から。フロッグとトード。地表種の違い!?
ツリーフロッグとは、読んで字の如く、
主に草や木の上で生活する種類を指します。
吸盤があって、壁をぺたぺた登れる奴等です。
反面、壁を登れない種類は地表種と呼ばれます。
ツリーフロッグが明確に吸盤タイプを指すのに対して、
↓
トードは厳密にはヒキガエルを指す言葉ですので、
ゲームやアニメの世界では混同されがちですが、
トードと呼ばる連中は地表種に含まれます。
それでは、まずはツリーフロッグについて紹介してみましょう。
日本カエルの代表、ニホンアマガエル
カエルと聞いて思い浮かぶ顔は、日本人にとってはコイツの顔でしょう。
庭先などにも生息していて、4センチ~5センチ程度しかない比較的小さいカエルです。
もう一方の代表にトノサマガエルが居ますが、名前だけは有名でも田んぼや小川に生息している関係上、
名前は知ってても都会では実物に出会えない場合も多く、身近な存在としては、やはりアマガエルに軍配があがります。
カエルはカメレオンの様に体色を自由に変えられる?と思っている方が多いですが、あそこまで自由に変えられるカエルはまずいません。
また、色変ができるカエルでも、暗い色と明るい色と言った大雑把な変色しかできない物がほとんどです。
アマガエルは基本色を緑にしつつ、灰色や茶色にもなれるので変化の幅は広い方ですが、それでも精々その3色のみです。
また、この変色は周囲の色に溶け込むカモフラージュなので、日中に限った行いで、夜間は土の上でも緑色です。
小さく、顔つきも愛らしいので油断してしまうかもしれませんが、
皮膚から出る毒性は国内のカエルとしてはかなり強力な部類になります。
アマガエルを掴んだ手で目をこすると、
かなりの激痛を味わう事になり、ヘタすれば失明します。
アマガエルに限った事ではありませんが、
生き物を掴んだら必ず手を洗いましょう。
小さい割りに意外と長生きで、飼育下では5年~10年以上生きます。
逆に野生化では、外敵や病気などで平均3年~4年程度になってしまい、寿命を全うする個体は少ないようです。
夏になると色彩異常を起こした、水色のアマガエルや黄色のアマガエル、アルビノのアマガエルなどが、ネットオークションなどに出回るのが恒例となっております。
どれも1万円前後を基準に、その時の出品量で値段は増減するようです。
そんな代表的なカエルですが、日本に住むアマガエル科のカエルは、
このニホンアマガエルと、南西諸島に生息するハロウェルアマガエルのみです。
モリアオガエル
モリアオガエルって、天然記念物なのにどうして売っているの?…後述
モリアオガエルは、詳しくない人からしたらでかいアマガエルに見えますが、アオガエル科に属する別系統のカエルです。
- 全く模様の入らない個体
- 少しだけまばらに模様のある個体
- びっしりと模様がひしめきあっている個体
と、個体ごとに見た目や印象が、がらりと変わるカエルです。
ペットとしては、模様がびっしり入っている個体が珍重される傾向にあり、
国内のカエルとしては珍しく、そうした個体はオークションなどで比較的買い手が付く可能性のあるカエルです。
繁殖方法も独特で、水面に突き出した木の枝や草に泡状の卵巣を作ります。
1匹の雌に多数の雄が群がり、雌が分泌する粘液を雄がみんなでかき混ぜて泡を作りつつ、
同時に産卵と放精が行われる、なんとも奇妙な繁殖方法です。
この、1雌多雄の繁殖形態に、逆ハーレムなんて言う人がいますが、ちょっとまってください。
最初の1匹は確かに雌が認めた雄ですが、いざ産卵中に寄ってくる雄は、そうしたメインカップルになれず弾かれた、非モテの雄達です。
にも関わらず、産卵中は逃げようがないので、あまり歓迎できる状況とも言えません。
雌としては「しかたがないから、巣を作るの手伝うならちょっとだけ卵を分けてやるよ」と言った気持ちでしょうか?
モテない雄も、こうした雌の寛大なお心遣いで子孫を残す事を許されるので、
進化の過程で特殊な繁栄方法を選択した、珍しいカエルと言えます。
地域によって差がありますが、産卵は4月~7月の間にかけて行われるので、
その頃、もしも池や貯水池で水面に突き出した枝に白い泡状の塊がぶら下がっていたら、それはモリアオガエルの仕業です。
この泡巣は、表面が乾燥しているものの中は保湿された作りで、卵が孵ると溶け出し、オタマが水の中へと落ちる仕掛けになっております。
なので、親の産卵位置が悪いと、孵化したオタマは地表に落下し短い生を終えます。
モリアオガエルは森林の木の上に生息するカエルなので、この産卵期以外は生息地であっても非常に出会い難いカエルです。
このカエルを飼育したいと思った場合、この泡巣を発見したら枝ごとガメてしまい、オタマから育てるのが手っ取り早いです。
水を張ったバケツの上に2本ほど棒を渡して、その間に放置しておけば良いでしょう。
長くても2週間ほどで300匹~800匹ほどが孵化しますので、全部育てても良し、必要分以外は放しても良しです。
さて、このモリアオガエル。
実は天然記念物として指定されております。
では、どうして販売や飼育が可能なのか?
と言いますと、モリアオガエルはモリアオガエル自体が天然記念物なのではなく、その繁殖地や一部の指定範囲内に生息する個体のみが該当するからです。
なので、そこ以外で捕まえた個体は、販売や飼育が許されるわけです。
代表的な天然記念物指定地域
- 福島県双葉郡川内村平伏沼(へぶすぬま)の繁殖地、
- 岩手県八幡平市の大揚沼モリアオガエルおよびその繁殖地
が国指定の天然記念物と指定されている他、各自治体レベルでの天然記念物指定は数多いです。
愛知県新城市もカエル指定を受けているようです。
もしも、捕獲や購入する場合は、この辺りに該当する物ではない個体を選んでくださいね^^
シュレーゲルアオガエル
モリアオガエルにしては小さいけど、アマガエルにしてはでかいシュレーゲルアオガエル!
一見すると、模様のないモリアオガエルですが、最大サイズが3センチ~5.5センチとモリアオガエルより小さく、モリアオガエルより低い場所を好むので、微妙に生息域も異なります。
紛らわしい事に、このカエルも泡状の巣を作るので、モリアオガエルの生息地と被る地域では、より混同されがちです。
ただ、このカエルは木の上ではなく、土の中に泡状の巣を作るので、泡巣の場所が田んぼや池の斜面だった場合は、まずコイツの仕業です。
モリアオガエルが重力落下に任せた脱出なら、コイツは雨水を利用した脱出です。
- 雨水が上手く入らない作りだったり
- 逆に孵化前にダバダバ入り込んだり
- 孵化しても延々雨が降らなかったりしたら
オタマの命はそこで終了です。
産まれて早々に生存は運任せとか、かなり切ないですが、意外と成功するらしく生息数自体は多いようです。
居る所には居るカエルですが、家の周りにはモリアオガエルは居てもこのカエルはほとんどおりません。
生息数は地域差が激しいカエルと言えます。
また、名前に付いている謎の「シュレーゲル」は、江戸時代に標本を持ち帰ったシーボルトの標本を研究した人の名前だそうです。
シーボルト自身ではなく、彼が持ち帰った標本を調べた人(←シュレーゲル)って言うのがミソです。
カジカガエル
すげぇ地味。その鳴き声は極めて美しい!カジカガエル
水の綺麗な渓流に生息している、ものすごい地味な色のアオガエル。
それがカジカガエルです。
生息地の関係上、自然が豊かで汚染されていない、山間の綺麗な川がなければ出会えないカエルです。
茶褐色~灰色なのに「アオ」ガエルとはなんとも妙ですが、分類学なんてそんなものですので、突っ込んではいけません。
雄は4センチほど、雌はその倍の8センチほどになるカエルです。
このカエルの特徴は、なんといってもその鳴き声!
夏場の繁殖期には、フィフィフィフィー!と、かなり透き通る声で雌を呼ぶと共に縄張りを主張し、
渓流の石の上で単独ライブを開きます。
複数居ると張り合ってさえずり合うので、かなりの音量になります。
山の中で唐突に美しい鳴き声を聞いた!なんて場合、それは鳥ではなくカジカガエルかもしれません。
コロコロやギャーギャーと鳴く多くのカエルとは異なり、鳥と比べても劣らない美声ですので。
これを是非とも自宅で再現したい!と思うのは人の常なのでしょう。
その美声を楽しむ為に、江戸時代にはカジカ籠と呼ばれる専用の飼育ケースまであったようです。
ですが、残念ながら飼育下ではほとんど鳴いてくれません。
渓流独特の湿気と清涼感が伴わないと、鳴いたとしても、精々、一言二言です。
飼育下では再現し辛いので、ただただ地味なカエルを淡々と飼う事になります。
また、声で存在を主張する雄と比べ、鳴かない雌を見つけるのは困難です。
カジカガエルに限らず、ほとんどのカエルは鳴き袋のある雄しか鳴かないので、どんなカエルでも雌を見つけるのは雄と比べて大変です。
特にカジカガエルの雌は本来の生息地が渓流周りの深い森の中なので、
雄の声に呼ばれた物か、既に合体している物を捕まえなくてはならず、出会う事が他種より困難です。
その為、販売されている個体も、雌の方は雄の倍近い値段だったりします。
まとめ
本州に生息する、ツリーフロッグについてはこんな所でしょうか?
あれ?おしまい?と思った方もいるかもしれませんが、
「本州に生息」「ツリーフロッグ」と言う2つの条件に該当するカエルは、僅かに4種しかいないのです!
カエルと言えば、壁面をぺたぺた移動するツリーフロッグのアマガエルが代表ではありますが、
日本に生息する多くのカエルは地表種であり、トノサマガエル型がほとんどだったりします。
次回はこの、地表種についてご紹介したいと思いますが、種類が多いので、
前後編に別けて解説していきます^^
引き続きお付き合い頂けましたら幸いです。